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生命保険信託とは

専門家の声-円満な相続の切り札 家族信託-

家族信託普及協会代表理事 司法書士・宮田浩志さま

聞き手:プルデンシャル信託株式会社 代表取締役社長 本多巨樹

認知症リスク、相続への関心の高まりで注目を集める仕組み

本多:家族信託普及協会を発会される際に宮田さんにお会いしたのが2014年。年々家族信託に注目が集まっていますね。改めて社会に必要とされる背景を教えていただけますか?

宮田浩志さま写真

宮田さま(以下、宮田):少子高齢化が進んでいることに加えて財産を持っているご高齢者の方が多いということが挙げられますね。健康寿命が延びているわけですが、一方で誰もがピンピンコロリと天国へ行けるわけではありません。認知症をはじめ、大病や事故などで判断能力、意思能力が低下したり、喪失してしまうリスクはむしろ高まっていると言えます。寿命を全うするまでに、健康寿命が尽きてしまう。その結果、財産をきちんと管理できない、あるいは有効活用できなくなってしまうという問題が生じています。

本多:判断能力、意思能力を喪失した方の財産管理については、成年後見制度が最も利用されてきた背景があります。家族信託と後見制度は何が違うのでしょうか?

宮田:確かに、財産管理能力を補完するための制度として、一般的には成年後見制度が最も利用されており、本人保護のためには有効な仕組みです。しかし、しっかりと財産管理できる仕組みである反面、ニーズが合わないケースがあるのも事実です。具体的にいうと、一度後見制度が開始された後は、本人名義の資産の組み換えができないという点です。例えば、古くなった自己所有の家屋を建て替えよう、あるいは入居率が芳しくない収益物件を、収益性のより高いマンションに買い替えようと思ったとしても、実現できない可能性があります。たとえそれが、ご家族の総意であったとしてもです。成年後見制度は、あくまでもご本人の今の資産をそのまま維持する、というのが原則なんです。

本多:そうしたケースで、家族信託を活用するとどうなるのでしょうか。

宮田:家族信託の場合、ご本人が元気なうちから、子どもを信じて自身の持っている財産の管理をあらかじめ託しておくことができます。判断能力がしっかりしているうちに、子どもの代に託しておき、自分自身が元気でなくなったときも、財産管理が円滑に行える、あるいは資産を有効活用できるようにしておくのです。元気なうちから想いを託すという点では、生命保険と似ていますよね。
また、成年後見人が本人資産を横領する事件が続出する事態を受けて、家庭裁判所による監督が年々強化されるなど、後見人にとっての負担がより増えてきています。本人保護のためには必要である反面、少しでも財産を持っていたら後見監督人を関与させなければならないといった点では、後見人の負担・制約が増すのに加え、被後見人の経済的負担も増すという面があるのも事実です。
2015年1月から相続税の基礎控除額が縮小し、より多くの方が相続対策をしなければいけなくなりました。資産を持っている方が、無策で相続を迎えると痛税感を味わうと考え、先行して利用し始めており、現在ではいろんなニーズをお持ちの方にも信託の利用が広がってきました。

本多:相談は親世代と子世代のどちらからが多いですか?

宮田:どちらかというと子世代からの問い合わせが多いですね。実際に相続税を払うことになるのは子世代ですから、親の資産状況を心配して連絡してこられるケースも多いです。
家族信託普及協会にお問い合わせが入る場合もありますので、その際は概要だけを伺い、全国にいる専門士業の方やコーディネーターが個別に対応しています。

「相続」ではなく、家族の「今」から入ることが肝心

本多:相続に関する話題を嫌う親世代も中にはいらっしゃると思います。家族信託の話を進めていく上での留意点はどのようなものでしょうか。

宮田:家族信託を扱う専門家は、アプローチを間違えてはいけないと考えています。こういった問題を抱えるお客さまは、「相続」からではなく、「今」からアプローチするのがベストです。
「今、どのような財産をお持ちで、この先どんな生活をしたいですか」と。そして「今後は資産をどう使いますか。消費し尽くしますか、殖やしますか」と順に聞いていくのです。そうすると、親の想いだけでは万全な備えはできません。親を支える子どもも巻き込んで話を聞いていかなければなりません。

本多:どうやって巻き込んでいくのですか?

宮田:私がご相談いただいた際には、まずお客さまに「家族会議を招集できますか?」とお聞きしています。家族信託というなじみの薄い仕組みをご家族が集まっている中でご説明し、皆さんに同じイメージを共有してもらいます。そこからがスタートです。家族が同じレベルで理解がないとその方策の良し悪しが議論・判断できませんので、その上で、「面白いね、使えるね」となったら、実際に「じゃあ誰が預かるの、どうやっていくの」と具体的に話が進んでいきます。家族みんなのベクトルが合っていれば、そこから出てくる解決策に取り組みやすくなります。

本多:相続を受ける側の目線から入ってしまうと、親世代の態度は違ってしまうと。

宮田:間違った形で相続から入ってしまうと、「遺言は書かん」ということになったり、「俺の死んだあとは適当に分けてくれ」と言うようになったりします。
「相続」は亡くなった後を想像しますが、「家族信託」は老後のサポートのことから考えます。自分の老後のことなので聞かざるを得ないわけです。親と子供がきちんと対話することから始まるのが家族信託の良いところです。
結果として、家族信託を組む、組まないはどちらでもいいんです。親と子のベクトルがそろっていれば円満な資産承継に向かっていけますから。遺言すらなくたって、財産を生前にしっかり管理できて承継できれば信託もいらないというケースもあります。
当会の名称が「家族信託普及協会」ですので、信託の組成件数が増えれば良いと思われるかもしれませんが、実は件数自体はたいした目的ではないんです。普及することによって、「まずは家族会議だよね」という認識が広がっていけば、世の中が変わっていくと思うんです。それが最大のポイントですね。

本多:家族信託普及協会を発会したきっかけはどのようなものだったのでしょうか。

宮田:現在、私とともに代表理事を務めている芳屋(プロサーチ株式会社芳屋昌治社長)との出会いです。不動産コンサルの社長として、もともと芳屋は相続対策などを行っていたのですが、お客さまが認知症となってしまい計画が頓挫するなどの問題に直面していました。そんな中、縁あって私が家族信託の講演をしているのを聞いて、これは使えると思ったのだそうです。

本多:協会が発会した2014年当時、家族信託を扱う専門家はどの程度いらっしゃったのでしょうか。

宮田:弁護士、司法書士でもほんの一握りで、草の根活動といった感じだったでしょうか。そもそも家族信託を扱う業務というのは司法書士のど真ん中業務ではないんですよね。登記業務とは全く異なる業務なので、後見業務などをやっていない限り家族信託にはなかなか行き着きません。私はその頃、たまたまそういう案件を扱えたので気付きがありましたが、ほとんどの方はそうでなかったと思います。

本多:芳屋さんと出会った頃は、まだ一般には家族信託はよく知られていなかったのですね。

宮田:そうです。役に立つ仕組みだけれども、周りは誰も知らない。ですから家族信託の普及に使命感を覚えましたし、普及しないと仕事も広がらないと考えました。家族信託をきちんと全国に知らしめていく価値があると思って始めたんです。
最終目的は、一般の皆さんに知っていただくことです。その方法は考えに考えた末、協会から一般の方に直に伝えるのではなく、一般の方々をお客さまとする専門家に正しくわかってもらうことが近道だろうとの結論にいたりました。

専門士業と営業職の役割分担で課題解決を図る

本多:そうして協会がEラーニングなどで家族信託のカリキュラムを配信するようになったのですね。

宮田浩志さま写真

宮田:はい、今では全国1000名を超える会員がおり、毎月研修会も行っています。会員の中には、実際の相談案件に関わっていただく「家族信託専門士」やお客様のニーズをくみとりご提案する「家族信託コーディネーター」の育成も行っています。コーディネーターは、日ごろから財産をお持ちの方に課題解決の方法を提案している、不動産業界、生命保険業界の営業の方が多いですね。
よく、我々のような専門士業だけで良いのではないか、と聞かれることがあります。しかしお客さまの懐に入って悩みをしっかり聞く役割は、必ずしも専門士業である必要はありません。むしろ、普段からお客さまが接している営業専門職の皆さまのほうがしっかりお客様のニーズをとらえられることが多いです。一方で信託契約書の作成実務は専門士業が責任を持って行うべきですので、コーディネーターと専門士が、それぞれの得意分野で役割分担するスタイルをとっています。

本多:生命保険信託以外の信託活用として、家族信託を理解しておく意義はどのあたりにあるとお考えでしょうか。

宮田:お客さま第一に考えた時に、生命保険だけでまかなえない、というケースはよく起こりうるケースだと思います。老後や相続の問題について相談を受ける場合に、家族信託は選択肢として外すことはできませんし、学んでおいて損ではないですよね。

本多:プルデンシャル生命のライフプランナーは入社研修で、「今日からお客様のことだけ考えるように」と言われています。そうしたライフプランナーを通じたお客さまの声に応えるために、我々は生命保険信託というサービスを扱うようになりましたが、生命保険以外の財産については、家族信託もお客さまをサポートするために有効な選択肢となりますね。

宮田:生命保険も信託も、本当に必要性を感じるのは、対策をしてから10年20年先ということがありえます。しかし実際にその時を迎えて、本当に必要な内容になっていなかったという事態に陥らないように、お客さまと向き合う人間がきちんと先を見越してしっかりとしたサービスを提供しなければいけません。そこは職種を超えて志を高く持つ者同士で、お客様に喜ばれるお仕事をやっていきたいですね。

本多:親会社のプルデンシャル生命は2017年で創業30周年を迎えます。この先数十年を見据えた際にも、お客さまのために真に必要とされるコンサルティングを続けていけるように、サービスのクオリティを保つだけでなく、専門士業の皆さまとも緩やかに連携し、全国各地で、お客さまを支えるネットワークを築き、承継していければと思います。
本日はどうもありがとうございました。

宮田浩志さまプロフィール

司法書士、マンション管理士。宮田総合法務事務所所長。2010年から150件ほど家族信託の案件に関わる。2014年に一般社団法人家族信託普及協会を発会させ代表理事を務める。
著書に「相続・認知症で困らない家族信託まるわかり読本」(近代セールス社)がある。

宮田総合法務事務所
http://legalservice.jp/別窓で開く

登録日:2017.02.22
登録番号:ptjs-2017-01-002

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