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生命保険信託とは

専門家の声-高齢者支援と生命保険信託-

(以下インタビューは2016年当時の内容となります。)

けやき野龍馬グループ共同代表

弁護士 小此木清さま
司法書士 高橋弘さま
司法書士 杉山春雄さま

聞き手:プルデンシャル信託株式会社(以下、PTJ)

PTJ:皆さんはそれぞれのお立場で、高齢者支援と市民後見人の推進をされています。

高橋弘さま写真
司法書士・高橋弘さま

高橋さま(以下、高橋):後見人は、ご本人が自分らしい生活を続けられるよう、その身上監護を行うことに主眼があります。身近な親族や親しい友人に身の回りの世話を託せるのであればそれに越したことはありませんが、同じ地域にはそういった人がいないことも多いのが現状です。
戦後、一人ひとりの個人が尊重される社会となった反面、地域社会における人と人との支えあいや、コミュニケーションが希薄になるという弊害も生まれました。市民後見人には、この弊害を適度に修復する機能があると考えています。地域社会にはそれぞれ独自の生活様式があります。同じ地域の、同じ生活様式を共有する身近な人に支えてもらうことは、ご本人にとって有意義な点が多いように感じています。

小此木清さま写真
弁護士・小此木清さま

小此木さま(以下、小此木):専門職がいきなり介入しても、その地域特有の生活様式がわからないこともあります。高齢者の権利擁護をきちんと理解している市民後見人が身上監護を行い、そのバックアップとして専門家がいるのがベストな体制なのではないかと思います。

杉山さま(以下、杉山):団塊世代の市民後見人への関心はとても高いです。社会貢献したい、地域のために自身のセカンドライフを有効に活用したいという意欲が高いのですね。このような方々にきちんとした知識を持っていただき地域で活躍いただくことで、単に人材不足を補うだけではなく、地域での支えあいが生まれ、よりご本人に寄り添った支援ができると考えています。

PTJ:高齢者の財産管理という面では、どのような点に難しさがありますか?

高橋:一番課題が残るのは、事前に何も決めずに認知症になってしまうケースです。でもご本人にしてみれば、いつまで生きるかわからないですし、財産の割付を含めて事前にはなかなか決められないという方は多いですね。

杉山:認知症の場合、本人の意思が確認できない中で、財産の使い方については裁判所が財産権保護の観点から抑制的な判断をすることがないとはいえませんが、こうした傾向に過剰反応してしまう後見人が少なくないということも問題だと思っています。

高橋:我々のような法律家にとっても、ご家族、特にご本人の死後、その財産を相続することになる推定相続人との利害が対立することもあり、ご本人の意思に沿った財産の使い方ができているかいなかをチェックすることには、難しい判断を伴うことがあります。ご本人の生活の質(QOL, Quality of life)を維持し充実させるために、本人が保有する財産の有効活用をどのようにはかるべきなのか、個別案件ごとの判断に難しさを感じます。

PTJ:高齢者の方にとって「生命保険信託」の活用には、どのようなメリットがあるとお考えですか?

杉山春雄さま写真
司法書士・杉山春雄さま

杉山:長寿社会では、生命保険の被保険者よりも受取人の方が先に亡くなるというケースも出てきています。そうなると本人が想定していた順番通りに保険金が渡らないこともあるんですね。
その点、信託を設定しておけば、第二、第三受益者を事前に決めておけるので安心です。

小此木:遺言では財産を誰に渡すのかというところまでしか決められず、渡したらそれで終わりで財産の管理機能もありません。一方で信託には財産の管理機能があり、「次の次まで決めておける」という連続受益を設定することも可能です。そこが信託の魅力です。
また、保険法に基づき、遺言で保険金受取人の変更を指定していたとしても、実務面では、保険金が元の保険金受取人に支払われる前に保険会社が遺言を把握できる状況になっていなければ、絵に描いた餅です。
生命保険に乗せた契約者の意思を、法的に安定した仕組みの下、適切な財産交付にも反映できる生命保険信託という仕組みは素晴らしいと思います。後見制度では、財産は本人のために使うことしかできず、第三者に贈与することはできない。そういった面でも、生命保険信託は現在の後見制度をフォローする商品だと思います。

高橋:保険金を信託会社が委託者の意思に沿ってしっかり管理してくれるのであれば、後見人の負担が軽くなりますね。後見人が本人の意思を尊重しながら、生活を支援すること、すなわち身上監護により注力できるようになると思います。
他方、信託は「争続」を回避する最善の策にもなりうると思います。しかし、これまではその受け皿となる受託者の選択肢が限られていたように思います。とはいえ、法の制度趣旨を逸脱したり、濫用するようなことがあってはなりません。今回、プルデンシャル信託がそこに参入された意義は大きいと思います。

小此木清さまプロフィール

弁護士。弁護士法人龍馬代表社員。高齢者問題の解決をライフワークに、地域に根付いたホームロイヤーの普及を目指して活動している。

弁護士法人龍馬
https://www.houjinryouma.jp/別窓で開く

高橋弘さまプロフィール

司法書士。けやき野司法書士法人経営責任者。埼玉県飯能市における市民後見の推進や、高齢者・障がい者を地域社会全体で支えあう「ノーマライゼーション」社会の実現に向けて活動している。

杉山春雄さまプロフィール

司法書士。けやき野司法書士法人執行責任者。これまでに司法書士による後見人養成・指導監督のための公益法人設立に携わるなど、成年後見制度の普及に尽力している。

けやき野司法書士法人
https://www.keyakino.co.jp/別窓で開く

登録日:2022.01.14
登録番号:ptjs-2022-01-003

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