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生命保険信託とは

専門家の声-行政書士から見た「生命保険信託」の可能性-

(以下インタビューは2016年当時の内容となります。)

渡部行政書士事務所 代表 渡部伸さま

聞き手:プルデンシャル信託株式会社(以下、PTJ)

PTJ:渡部さまは行政書士でありながら、書籍「障害のある子の家族が知っておきたい『親なきあと』」を上梓され、全国各地で講演活動をされています。また、ご自身も障がいのあるお子さんをお持ちでいらっしゃいます。障がいのあるお子さんをお持ちのご家庭にとって、金銭面についてはどのような不安をお持ちなのでしょうか?

渡部さま(以下、渡部):講演会でよく聞かれるのは「子どものために、いくら貯金しておけばいいのですか?」という質問です。重度の障がいがある場合は基本的には就労ができないですし、中軽度で就労ができたとしても、就労環境や就労先での立場が不安定だったり、経済的に自立できる金額を稼げないことが多いのが現状です。

PTJ:厚生労働省が発表している「平成27年版障害者白書」を見ると、「知的障害児・者」は約74万人で、そのうち在宅者が約62万人というデータがあります。※

渡部:施設に入っていれば、そのお子さんは様々な形で守られており、ほぼ安心だと言えます。しかし8割強を占める在宅者にはリスクがたくさんあるんです。彼らは「親なきあと」に、生活する場を自分で見つけなければならない。逆を言えば、住むところの目処さえたっていれば、他に大金を残す必要はないというのが私の考えです。むしろ、遺産で大きなお金を渡すことの方が、リスクがあると思います。

PTJ:誰がそのお金を管理するのか、という問題ですね。

渡部:そうです。これも障がいの程度によって状況が異なるのですが、重度の場合は自分でキャッシュカードでお金を引き出すことも、自分で支払うこともできません。そのような方は家族がいない場合は施設やグループホームに入居している場合がほとんどですので、施設職員や、成年後見人がついていてきちんと管理してくれています。問題は、中軽度の方です。自分でお金を引き出すことも、支払うこともできるのです。自分でできるのになんで管理されるのかと、成年後見人が間に入ることを嫌がる人も多い。その結果、内容を理解しないままに大きな契約を結んでしまったり、支払ってしまったりというトラブルに巻き込まれるケースが多いのです。

PTJ:生命保険信託は、現時点では死亡保険金に限定されますが、お金の管理を信託会社が責任を持って行うという仕組みです。最初にこの商品を聞いたときはどのようにお感じになりましたか?

渡部:これで親御さんたちの選択肢がひとつ増えたなと思いましたね。これまでは成年後見を利用するか、日常生活自立支援事業を利用して日常的な金銭管理をしてもらうかしか方法がなかった。そこに生命保険信託が入ってくるのは、選択肢が広がっていいなと思いますね。

渡部伸さま写真

生命保険信託は一つの「型」が決まっていますし、申し込みも簡単なのがいいと思います。それに、生命保険信託の連続受益の機能を使えば、子どもの次、またその次まで決めておけますよね。例えば子どもに渡した後は、お世話になった社会福祉法人に寄付するということもできます。

生命保険信託のメリットは、一括で大金が渡ってしまうという悩みを解決できるという点です。単純な相続はもちろんのこと、遺言が作成されていても、障がい者の銀行口座に何百万円、場合によってはそれ以上のお金が一括で入るわけです。先ほどもお話したように、中軽度の方は日々の生活に必要の無い契約を結んでしまう、更には悪質な詐欺に合うなどのリスクも大きいため、月々決まった金額しか入らない仕組みなのは、親の目からすればとても安心できます。

PTJ:生命保険信託を使えば、お金を扱う方の負担も軽減できるという面もあります。

渡部:現状を見ると、親なきあとのお金の管理はきょうだいや親族、もしくは就労先の会社の方がサポートしてくれて何とか成り立っているんです。でも、例えば親ではない第三者が彼らの銀行口座に入っているお金を引き出したり現金を扱ったりすることは、負担も大きいし難しいのです。

PTJ:生命保険信託では、指図権者からご連絡をいただき、例えば請求書や領収書などの客観的な資料を提示いただいて、委託者である親御さんなどが当社に託した「信託設定の趣旨」に照らしてその支出が適切だと確認できれば、随時交付という形で必要額をお渡しします。指図権者の役割について問い合わせをいただくことも多いのですが、当社の信託契約においては、指図権者はあくまでもお金が足りないという情報を当社に伝えていただく役割です。実態に即して言えば、「随時交付の協力者」という位置付けとなります。

渡部:親なきあとは、例えば病院の事務的な手続きや、入居施設の費用改定などの契約関連などの代理行為を信託会社が直接担当することはできませんので、そこは法律上の代理権を持っている成年後見人の役割になります。大きな財産管理は信託会社に任せて、成年後見人はちょっとしたお金の管理と事務手続きだけでよくなるという点で、役割分担ができると思います。

親が元気であれば、焦らずに、しっかりと子どもの面倒を見ればいいと思います。でも、親なきあとに、誰にも看てもらえなくなるのが一番辛いことです。ですので、親御さんには社会との接点を常に作っておき、様々な情報を仕入れておいたほうがいいですよとお話しています。その情報の一つとして、生命保険信託が親御さんに伝わっていくといいなと思います。

※令和3年版 障害者白書 「知的障碍児・者」は109.4万人、そのうち在宅者が、96.2万人
https://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/r03hakusho/zenbun/pdf/ref2.pdf別窓で開く

渡部伸さまプロフィール写真

渡部伸さまプロフィール

渡部行政書士事務所代表。「親なきあと」相談室にて、知的障がいのある方の親御さんの安心のために「親あるあいだ」に「親なきあと」の準備を!と訴えている。著書に、「障害のある子の家族が知っておきたい『親なきあと』」(主婦の友社)がある。

「親なきあと」相談室
https://www.oyanakiato.com/別窓で開く

登録日:2022.01.14
登録番号:ptjs-2022-01-003

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